研究講座とイベント

  • 2019/07/29
  • コラム
  •  

 

新会長・栗田 誠の会長就任挨拶

一覧を見る RSSフィードの購読はこちら

 

競争法研究協会の会長に就任するに当たって

栗田 誠
 
  本年4月より競争法研究協会会長に就任いたしました。前任の矢部丈太郎会長や伊従寛名誉会長に比べて甚だ軽量級ではありますが,誠心誠意務めさせていただきますので,何卒ご指導ご鞭撻のほどお願い申し上げます。

 私も伊従名誉会長や矢部前会長と同様,公正取引委員会に勤務しておりましたが(1977年~2001年),比較的早くに学界に転じ,千葉大学を経て,昨年4月より白鴎大学法学部において教育・研究に携わっております。
 大学に移って間もなくの頃から,伊従会長(当時)からのお誘いにより,度々月例研究会等において様々なテーマについて発表する機会をいただき,大変勉強になりました。また,2000年代初めに外部資金も獲得しつつ実施されていた東アジアの競争政策プロジェクトに参画させていただいたことが私を東アジア競争法研究に導いてくれました。さらに,独占禁止法の手続に関する研究会や電力事業と独占禁止法についての集中的な勉強会にも参加させていただき,研鑽を深めることができました。このように競争法研究協会は,私にとってまたとない独占禁止法・競争法研究の場であり続けてきました。
 
 この度,思いもかけず,伊従名誉会長や鈴木啓右業務執行統轄理事からご推挙をいただき,会長職をお引き受けすることとなりました。これまでのように自身の研究の場としてではなく,会員向けのサービス提供はもとより,産業界や当局向けの啓発・提言といった活動に取り組むこととなります。何分にも不慣れなためにご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが,事務局の支援を得て,会務の着実な運営に努めてまいりますので,重ねてご支援をお願いする次第です。

 さて,我が国の独占禁止法・競争政策の運営をみますと,一方で,入札談合・価格カルテルといった,いわば旧来型の違反事件が後を絶たない中で,ICT,プラットフォーム,データといったキーワードに示されるような,新たな課題が次々と出てきており,個人情報保護の問題も含め,プラットフォーマーに対する関心・懸念が高まっています。また,国際カルテルや国際合併,あるいはいわゆるGAFAを巡る違反事件といったグローバルな競争法問題が脚光を浴びる一方で,地域銀行の経営統合や地域交通企業の共同経営など地域経済に関わる課題も指摘されております。こうした諸課題に公正取引委員会は的確に対応できているでしょうか。独占禁止法は実効的なエンフォースメントの仕組みを実装しているでしょうか。また,公正な手続や透明性は確保されているといえるでしょうか。規制される企業の側においても,コンプライアンスの備えは万全でしょうか。
  アメリカでも,19世紀末に制定された反トラスト法が20世紀をまたいで21世紀の経済社会に適応できるのかという疑問が示されることがあります。また,EU競争法の積極的な単独行為規制は単に成功した企業を叩いているにすぎないのではないかと批判されることもあります。さらに,競争法が世界に普及する中で,法域ごとに異なる競争法規制が円滑な国際的企業活動を損なうおそれが指摘されています。GAFAに対する競争法規制の必要性や可能性についても,法域により,あるいは論者により大きく見解が異なっています。国によっては競争法をも産業政策の一手段として活用しようとするかのような動きもみられます。通商分野に目を向けると,WTOを中核として形成されてきた開放的な国際経済法体制を揺るがすような事態が次々と生じています。
  こうした独占禁止法・競争政策を巡る国内的・国際的課題が山積する中で,民間の立場から中立的・専門的に取り組むことには極めて大きな意義があると考えており,本会もその一翼を担う所存です。皆様方の引き続きのご支援・ご参加を心からお願いして,会長就任のご挨拶といたします。

 

 

ページトップへ戻る