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  • 2015/01/07
  • コラム
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平成27年年頭所感

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                             年頭所感

                                              競争法研究協会 会長  伊従 寛

 新年あけましておめでとうございます。

 ご存知のとおり、2013年12月に通った独禁法の改正案に基づいて今、独禁法の執行手続きの規則を公取委では検討しています。おそらく近いうちにパブコメされると思いますが、どうなっているかということを簡単にお話ししておきたいと思います。

 アメリカでは独禁法が実施されたのが1900年前後です。ルーズベルトのニューディール政策の第二期の頃です。そのところに日本の独禁法が出来ました。1950年代・60年代で、随分強化され、合併規制が始まって十数年間で約1千件の合併が規制されました。
それから当然違法の原則は価格協定だけでも再販、テリトリー制などで非常に発展して、鮮明に独禁法の流れができたのです。

 その後半世紀経って、アメリカの独禁法は随分変わっています。
一つは70年代に最高裁の判例で、合併についてはシェア基準だけでは規制できない、ほかの要因をちゃんと考えないとだめだという判決でした。そして77年にシルベニア判決で、当然違法を合理の原則に変えてしまったのです。ブランド間競争では競争制限効果と促進効果の両方見なければいけない。だから当然これでやるのはおかしいという論理に立った。
 80年にレーガン政権のとき、価格協定以外は全部合理の原則でやったところができて、それで違反かどうかは経済自治体に則してやるというかたちになった。これは上院、下院民主党でしたから、レーガン政権とブッシュ政権の12年間に、執行部と議会は対立した形になっていて、その間、判例のほうは緩やかなかたちで合理の原則をどんどん拡大していきました。

 その後民主党政権になって、民主党は判例を尊重して経済自治体に則すということでした。現在のアメリカ独禁法の規制というのは、クリントン政権のときに合併規制をして、技術ライセンスにしても80年以前はアンチパテントになり、特許は非常に危険だといわれていたのが、レーガン政権はプロパテントになりました。
考え方だけではなく、実際に95年のガイドラインにそれが反映されて、そこで60年代の規制が大きく変わりました。
それと同時に、じつは手続きも変わったのです。アメリカの場合刑事事件は別にして、立ち入り検査はありません。ですから強制権限に基づいて報告命令とか資料提出命令でやるわけです。疑いがあれば、どの程度の疑いかということも相手方に知らせなければいけない。相手方がそれが適当な強制権限かどうかを納得できなければ、裁判所で争うわけです。ですから結局違反の被疑事実をはっきり説明しないといけない。

 結局、随分手続きが変わって、2009年にオバマ政権の時、局長がアメリカの手続きについて説明していますけれども、アメリカではもう強制権限でやる以外ない。強制権限は要するに調査のための一つの土台みたいなものですが、それををそのまま出すのではなくて、相手との対話でやる。それはダイアログとディスカッションなのです。相手はいつでも疑いについて審査の各段階で来ているし、どういう疑いがあるかがわかっている。病院へ行って、レントゲンの写真なんかを全部見せるみたいなものです。ですから調査するのだったら協力しようという形になっています。情報交換はいつでもやります、意見交換もいつでもやりますということです。
 
 今は独禁法を強制権限を使ってやるのではなくて、相手との協調によってやっています。このようなスピーチを2009年に国際法曹協会の会合でしています。

EUの手続きはアメリカと同じように、日本ではまだはっきりしていない事前聴聞制をとって、防御権も認めて、審査官の資料も全部開示しています。それでも文句が出ている。制裁金が高くなったということもある。10億ぐらいが500億、1,000億ぐらいです。ことに単独行為の問題について、EUの執行手続きは不公正だということになっている。そのときにこのスピーチが影響して、結局EUは2011年10月に、FTCと同じように相手方と十分に意見交換、情報交換の会合を持って、相手方に納得してもらって調査をやるというかたちに変えているわけです。

 要するにこの50年間で、独禁法の執行手続きが随分変わっているのです。日本はそういうことをあまり知らないで、2005年の改正で反対に事前聴聞手続きをなくしているわけです。これから外国企業も日本に入って来て、手続きが米国、EUと日本が違うわけですから、国際的に協調をして独禁法をやることはできないし、作業部会もいろいろと困ると思います。こうしたことはあまり知られていません。
 今、手続き規則が検討されていますが、こういったことをよく考えながら、作業部会でもこれはいいチャンスですから、十分意見を言ったほうが宜しいと思います。

 

 

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