研究講座とイベント

  • 2013/04/18
  • コラム
  •  

 

第206回 月例研究会にて

一覧を見る RSSフィードの購読はこちら

 

 皆様、お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございます。
 新聞でご存じのとおり、先月公取委の委員長に杉本さんが就任されました。去年の9月以来かなり長い間、3人の委員で異常な状態が続いていたのですが、3月になりまして新しい委員会ができたということです。新委員長は、就任のときに、前委員長の後を継いで同じように独禁法を冷静に運用していくといわれています。新聞でご存じだと思いますが、今、政治的には消費税の増額の問題が重要で、それに伴って、公取委は、消費税が適正にとれるように独禁法でバックアップすることでいろいろ措置を考え、それが法案になって出ていましたが、当面はその問題が一番重要で、公取委のほうも忙しかったのではないかと思います。
 委員長は、今ご紹介しましたように、前委員長の10年間の実績を踏まえてその路線を続けていくと言っておりますが、そうなるかどうかについては、わたしは若干疑問を持っております。といいますのは、今の独禁法の運用というのは、国際的なアメリカ・EUを中心にした独禁法の運用ルールが、経済のグローバル化に対応してかなり変わってきています。日本と格差が出ているのではないかという感じを受けています。どのような点かといいますと、いくつかの面で出ていますが、1つは国際カルテルです。グローバル化に伴ってグローバルな競争が大きな流れになって、それを阻害する国際カルテルに対して、アメリカ・EUでは90年代半ばから非常に厳しく取り締まっています。日本の企業がそれに含まれていて、アメリカ・EUで随分取り上げられています。今アメリカでは特に国際カルテルの対策として、外国企業の独禁法違反に対して会社だけではなくて個人も。日本も個人をやっておりますが、個人に対する刑罰が執行猶予付で実際に実刑が科された例はないのですが、アメリカではどんどんこれを実刑化していて、それが非常に多くなっています。
 先日新聞にも出ましたけれども、自動車の部品問題で日本の企業の幹部が随分収監されております。日本ではなかなかそういうことをしないのですが、刑期が従来は2~3カ月であったのが、今は3年、4年とどんどん厳しくしております。日本も合併については反対にグローバルな競争に対応するために、随分前からシェア基準から実際の経済的な分析に変わってきています。これも日本がシェア基準から離れだしたのは2000年ぐらいです。ですから、これも随分遅れていて、また、手続も経済分析になるとどのような調査をするかというと、手続についても膨大な資料が必要です。一昨年の新日鉄の合併のときに、欧米並みになって、これも改善されてきているわけです。
 今残っている重要なことは2つあり、1つめは縦の協定です。メーカーと流通・販売業者との関係。各国では、国際競争に対応するために、縦の協定は横の協定と違うという認識が強くなって、ブランド内競争については原則としてはやりません。ブランド間競争を制限する場合にやる、と。それも競争に対する経済的な悪影響を立証してやるというかたちになっています。これがかなり形式的になっています。1991年の流通ガイドラインがかなり遅れているわけです。あのようにやることが、家電業界のように流通対策、販売組織が非常に遅れてしまいました。国際競争で非常に不利になります。このような問題が解決していないのです。
 また2つめは、手続が競争に対応するので、制裁金が高くなったことと関係しますが、EUが手続を2011年10月にアメリカのFTCの手続とほぼ同じ手続に変えています。基本的な考え方というのは、当事者、つまり規制する職員と規制を受ける会社の職員との対話によってやる、というかたちになっています。日本の場合、かなり一方的に手続がとられているし、2005年の改正で事前手続をやめて処分をいきなりやって、文句は後で聞くというかたちになっています。それに関連する改正案も出て、今廃案になっています。それをどうするかという問題が出ています。 
 ですから、このような状態をみると、前委員長のときの路線がとられるかどうかについては、わたしは若干疑問です。この動きというのは、グローバル経済がどんどん進んでいるわけですから、しかも東アジア市場を中心にそれが展開されるというときにどうなるかというのは、皆様方も関心を持たれておくといいのではないかと思います。
 (平成25年4月 月例研究会 談話より抜粋)

 

 

 

ページトップへ戻る