研究講座とイベント

  • 2012/09/21
  • コラム
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第199回 月例研究会にて

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お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。
このところの東京電力の値上げの問題が新聞等で報道されています。東京電力による値上げが独禁法違反になるのではないかと、どこかの企業が公取委に申告をしたようで、しばらく前ですけれども公取委は。それについての回答を出して、「私的独占」にはならないとしました。「私的独占」というのは、市場支配的な企業が、「他の事業者の事業活動を支配又は排除する」という要件が法律で規定されているので、値上げがこの要件に該当しないことは明らかですから、公取委はこの規定には違反にはしないという見解を出したことは、当然のことだと思います。しかし、公取委はそれに加えて、値上げが「優越した地位の濫用になる場合」には問題になる場合がありうる、ということを付け加えて言っています。私は、これはおかしいと思います。電力の販売については「私的独占」で規制していて、これが適用される規定であり、「優越した地位の濫用行為」の規制は基本的に購入面の規制です。大規模小売店や親事業者が納入業者や下請業者をいじめることを規制する濫用行為の規制規定です。国際的にも「購買力問題」(buying power)として規制議論があります。独禁法の「私的独占」は販売面を中心に規制を考えており、購入の問題というのは独禁法の普通の規定ではなかなか規制できないので、buying powerの問題として検討されています。日本の場合には、昭和28年に優越した地位の濫用規制という規定を「不公正な取引方法」として入れたわけです。主としてその当時の百貨店と問屋の関係や下請関係の問題でした。取引に際して当事者間に契約がなくて、納入業者は契約で保護されず、百貨店の言うとおりになっている。下請企業についてもそうだったわけで、前近代的な取引の問題です。このようなものについて、優越した地位の濫用の問題があったわけですが、販売の面についてこのような規制を言うというのは基本的におかしいのであって、問題があれば「私的独占」の問題です。そもそも電力料金については、電気事業法があって経済産業省が所管しているので、同省が電力料金自体を規制しているわけです。文句を言うほうも、そこに要望を言えばいいことなので、それを公取委に持ってくるというのもおかしい。
また、消費者は電力値上げ問題を消費者庁に持ち込んで消費者庁も電力料金問題を検討している。消費者庁は電力料金の規制問題について規制権限を持っていないのです。電力料金については電気事業法に規定があって、規制しているのは経済産業省です。ですから、消費者は電力料金の値上げについて意見があるなら、経産省に意見や要望をすべきです。本来であったら、電力料金値上げについて消費者や関係業者にいろいろ意見や要望があれば、経産省が公聴会を開くとかパブコメをして、消費者や消費者庁はその場で意見を言うのが法治国家の法律の建前であり、基本的なルールです。こういう基本的なルールが無視されているところに問題があり、長期的にみれば、規制の重複により規制が無責任になり、解決がかえって遅れると思います。消費者庁は、ある問題について消費者の立場から意見があるのだったら担当の規制官庁に意見を言えばいいことで、このような面でいうと、何か基本的な法制上の問題というのが非常に乱れていると思います。
そのような問題が最近かなり出てきていています。消費者庁も安全の問題について、今見てみますと、食品の安全、自動車の安全、航空機の安全、原子力や放射線の安全等についても消費者庁の関与のみならず規制権限や認可権をもっており、消費者に関連のある問題はすべて消費者庁が一元的に規制が必要だという風潮があります。広告では消費者庁認可の食品というのが出ています。このような問題については、政治家にも問題がありますしかし、安全問題はその対象商品ごとに異なっており、食品の安全と自動車の安全、原子力や放射線の安全というのはそれぞれ全く異なり、それぞれの専門機関でなければその安全の確保はできないはずです。米国にも消費者委員会がありますが、先日トヨタの自動車のブレーキの安全問題が大きな問題になった時に、その解決を担当したのは消費者委員会ではなくて、運輸省長官でした。安全について問題が生じたときに、それを正しく解決できるのはその商品の専門機関以外には規制能力はないわけです。安全問題はその商品の所管官庁が責任を持つべきで、消費者庁は所管官庁が十分にその機能を果たしていない疑いがある場合にそれを監視するとか、勧告するとか、二次的な役割の官庁にすべきです。まず、所管の専門機関が規制を行い、そこに何か問題があれば消費者庁が意見を言ったり、勧告をしたり、あるいは国会に意見を提出したり、場合によっては裁判所に提訴するなど二次的な規制をするのが本筋です。いずれにしても消費者庁は二次的な監視機構の問題です。米国をはじめ先進国では基本的にこのような状況になっています。日本ではポピュリズムが強く、消費者の目先の利益を追求する傾向があり、政治家にもその傾向があります。これでは基本的な消費者利益を確保することができないばかりでなく、関係する事業者や産業界も大きなマイナスを受け、問題は複雑になるだけです。消費者庁は自ら規制するのではなく、第一次の規制は専門機関に任せ、消費者庁は、そこに問題があれば担当専門機関に意見をしたり、勧告をしたり、国会に意見を言うとか、裁判で争うとか、監視的な面を担当すべきだと思います。このような基本的なところが今非常に混乱しており、これは消費者のためにもならないし、関係する企業のためにも複雑な問題を負わせることになるので、企業もこのような常識的な問題に対して明確な意見をいう必要があると思います。

 

 

 

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