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  • 2011/01/05
  • コラム
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平成23年 年頭所感

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明けましておめでとうございます。
 今年の春、通常国会に公取委のほうから審判手続を廃止する法案が出ているのですが、前国会では提案理由の説明だけで、審議に入れなくて、継続審議になり、今度の臨時国会に継続審議のまま出ているわけですが、わたしの聞いているところでは今度の臨時国会では通るのが無理だという状況のようでございます。非常に重要なのですけれども、手続の問題ですからゆっくり審議したほうがわたしはいいと思います。公取委の審判がなくなると、公取委は普通の行政官庁と同じようにどんどん処分をするということになります。わたしが見てみますと、現在でも事前に審判手続がなくなり、事後になって、事実の認定とについて、あまり相手の主張を考えないでやっているというような感じを持っています。これが事後審判もなくなってしまうともっとこの面がおろそかになるのではないかとおそれています。……今、事後審判が非常に増えています。事前審判が、審判が多くて困るというので、課徴金の納付時期を延ばすためにやっているのではないかというので事後にしたのですが、事後にしたら審判が増えてきました。審判手続の問題は、かなり重要な問題なのですけれども、いずれにしても今度の国会はどうも無理なようでございます。
また、一般にあまり知られていないのですけれども、独禁法上非常に重要な判決がアメリカで出ていまして、2007年の電気通信関係のトンブリ判決です。アメリカでは損害賠償など民事手続における、共謀の問題で米国の民事手続では、カルテル関係の問題です。本案審議に入る前に請求について却下できる手続があるのですが、これについて以前の最高裁の判例で1957年のコンレイ判決というのがあり、その時には却下するのは慎重に検討するというものでした。2007年のトンブリ判決は、それを大幅に変えまして、むしろ共謀の事実についての証拠があると十分に考えられなければそれは却下して構わないという判決が出まして、非常に画期的な判決です。正確にいいますと、「関係者間で合意が行われたことを示す真実と見られる十分に具体的な事実が述べられる必要があり、それにより一見して説得的(すぐ分かるということですね)な申立でなければ陪審の審議に入る前に却下して構わない」という判決です。カルテルに対する罰金や損害賠償額が高額になったために、カルテル問題の事件が増えてきました。その場合カルテル、すなわち共同行為ということを安易に訴える傾向がでてきたのです。しかし、共同行為に対するのは単独行為ですが、単独行為というのが競争の元になっているわけです。アメリカは独禁法というのが営業の自由を保護するため、単独行為を保護するために共同行為の共謀を立証するときには十分な証拠がなければそれはやってはいけないということを確認した判決になっております。日本では「合意」ではなくて、「共同の認識」などでやっています。この判決で述べられているのは、競争者間に共通のパーセプションがあってもそれが合意ではないから、合意をはっきり認定しなければ駄目だとしています。アメリカの独禁法にとって重要なのは競争であり、競争というのは個別企業の活動からでてくるので、単独の行為でやっていることについて安易に、共謀だと言って規制してはいけないというわけです。今、非常に制裁金も多くなっていますから、三倍額の損害賠償というのも相当多くなって、どんどん訴訟はが増えています。ですから、この間の濫用を防ぐという意味もあるのですが、そのような判決が出ています。
その判決に基づいて、本来独禁法の共謀の問題なので、いわゆる9.11のテロのときのパキスタンのテロリストを起訴したときに、テロリストのほうが法務長官とFBIの長官が共謀してモスレムで差別をしたということを言いました。その事件にもトンブリ判決の原則を適用しました。このような差別の問題についての共謀、共謀というのは独禁法だけではなくて、アメリカでは普通構わないことでも共謀でやると問題になるということが随分あります。イクバルというのはテロリストの名前ですけれども、イクバル判決で共謀の請求を却下して、これは独禁法だけではなくて民事法を含めた原則だということになっています。これも非常に大きな反響を呼んでいます。
日本では手続の問題はあまり議論されませんが、アメリカでは手続問題が重視されて議論されています。今日の問題とも少し関係があるかと思いますのでご紹介いたしました。

 

 

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